星の王子さま (新潮文庫)|サン=テグジュペリ 河野万里子訳


星の王子さま (新潮文庫)

 知ってはいるけど、どんな内容だか知らない。最近、そんな本がまだまだ残っていることに気づくようになりました。この、星の王子さまという本も、知り合いとの話の中で、ふと、読んだことがなかったと気づき購入したものです。 
 さて、星の王子さま、内容を知らないのも当たり前。実際には、ストーリーらしいストーリーの全くないお話でした。といっても、それが悪いと言いたいわけではないのです。大人である自分が読むと、やや大人を卑下しすぎた、あざとさは感じられるものの、諷刺と愛情にあふれた、なかなかにじんわりと来るお話でした。
 話自体は非常に短く、読みなれた人ならば、三十分もあれば読み終わってしまうのではないでしょうか。
 語り手は、砂漠に不時着したパイロットのぼく。飛行機の修理をしようと、一人奮闘しているところに現れたのが、星の王子さま。「おねがい……ヒツジの絵を描いて!」と、ぼくに真剣な口調で、素っ頓狂なお願いをしてきます。へたくそなぼくの羊の絵(?)に満足した王子さまはぼくに様々なお話をてくれます。愛すべき自分の星。これまでの旅で出会った、奇妙で滑稽な大人たち。そして、地球であった生き物。王子さまは、自分になついた(なつかせてくれとお願いしてきた)キツネから、有名な「いちばんたいせつなものは目に見えない」という言葉を教えてもらいます。
 ぼくが飛行機の修理をできた日は、奇しくも王子さまが自分の星を旅立ってから、一年たった日。王子さまは遠く、自分の星まで帰ることにします。しかし、王子さまの星はあまりに遠く、帰るためには肉体は重すぎる――王子さまはそのために、毒をもつヘビに力を借りるのです。
 果たして王子さまは、本当に星から来たのか。無事に星へと帰っていったのか。それとも、ぼくが孤独な砂漠でつくりだした幻だったのか。あるいは、ただの狂人の戯言だったのか。これらすべての疑問を包み込んだまま、このお話は完結です。
 どのパターンをとるかは、読む人次第。でも、きっとそんな野暮なことを考える大人には用のない話なのでしょう。王子さまは自分の星に帰って、毎日笑顔で暮している。そう信じて夜空を見上げるのが、この本の正しい読み方なのだと思います。


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