最後の一球 (文春文庫)|島田荘司


最後の一球

「御手洗潔シリーズ中、最高の異色&感動作」
 本の帯にはこのような煽り文句が書いてありました。島田荘司の本格推理好きの私はもちろん、迷わず購入です。トリックを見破れることは全くと言っていいほどありませんが、「あっそうなのか!」と本を見かえす時が本当に楽しいのです。
 とはいえ、本作はどうも性質が違っていました。
 御手洗潔のところにある日、一人の青年が訪れます。彼の依頼は、母の自殺未遂の原因が知りたい、というものです。しかしなぜか乗り気でない御手洗。ワトソン役の石岡のあまりよくないフォローにより、青年の母親に会うことになった御手洗は、多額の借金が原因であることを明らかにします。しかし、裁判を起こしたとしても圧倒的不利。さすがの御手洗も頭を抱えるが、何故か翌日、借金は消えていた。いったい何が起ったのか――というところで、場面転換。天才打者と二流投手の友情の物語で、事件の真相が明かされます。
 そう、なんとこの話は、御手洗潔シリーズにもかかわらず、社会派ミステリなのです。御手洗潔の登場は、冒頭シーンの後は、最後に「ふうん、やはりそういうことなのか」的に現れるだけ。がちがちの推理小説を期待していた私としては、どうにも拍子抜けする一冊でした。
 こればかりはどうしようもないものなのかもしれませんが、島田荘司の書く社会派推理小説は、古臭さが漂ってきてしまうのです。それは、悪徳金融業者を「道徳ローン」と名づけてしまうところでも明らかですが……もちろん、島田荘司ですので、ある程度の水準は保っています。念のため。
 御手洗潔を飾りでなくて、もっと活躍させてあげて! 求む、小面憎いまでの饒舌!
 というのがやはり私の本心です。


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