外套・鼻 (岩波文庫)|ゴーゴリ 平井肇訳


外套・鼻 (岩波文庫)

 いわずとしれた、ロシア大文学です。
 外国文学はちょっと、という方も、ぜひともご一読を。二作合わせても百ページ強です。そして、読みやすい。面白い。
「外套」は、冴えない小役人、アカーキイ・アカーキエヴィッチが主人公です。
 文書の清書しか能のない(それでもこの仕事に情熱を傾けている)アカーキイ・アカーキエヴィッチは、同僚からぼろぼろの外套を“半纏”と馬鹿にされています。
 しかしある日、“半纏”の修理に訪れた仕立屋で、成り行き上、外套を新調することになります。どうにかお金の工面をし、仕立屋の主人と共に慎重に吟味した布地と毛皮を使い、彼は立派な外套を手に入れました。
 誰もが称賛する素晴らしい外套。アカーキイ・アカーキエヴィッチも得意になります。
 上司が、彼の素晴らしい外套を讃えて夜会を開いてくれましたが、しかし、その帰りにアカーキイ・アカーキエヴィッチは暴漢に外套を奪われてしまうのです。
 警官に訴え、さらには有力者に訴えたアカーキイ・アカーキエヴィッチですが、不幸が重なり、一喝のもとに追い払われてしまいます。そして、絶望に打ちひしがれたアカーキイ・アカーキエヴィッチは、とうとう息絶えてしまうのです。
 というのが、大筋です。
 この話はアカーキイ・アカーキエヴィッチの哀れさ、それにつきます。
 彼はただ、新しい、すばらしい外套が手に入ったことが嬉しかっただけなのです。
 恵まれない境遇のため、弱気で、自分に自信のない彼は、自分のために開いてくれた夜会さえ、気乗りしないまま参加し、その結果、とんでもない不幸な目にあってしまうのです。外套を新調したときの彼の喜びがあまりに無邪気だったために、かえって、哀れさが強調されます。
 一方、「鼻」のほうは、朝起きたら鼻がなくなっていた男の話です。あまりにも悠長で的外れな騒動が、笑いを誘います。
 対照的な物語ですが、どちらも面白いです。


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