第四の手|ジョン・アーヴィング 小川高義訳


第四の手〈上〉 (新潮文庫)

 稀代のプレイボーイであるパトリック・ウォーリングフォードは、サーカスの取材中にライオンに左手を食べられてしまう、その5年後、手の提供者が現れるが、手の持ち主の妻が「手の面会権」を主張して会いに来る――
 なんともぶっ飛んだ設定に、読もう読もうと思っていましたが、ようやく読破です。いやいや、ぶっ飛んだ内容ながら、れっきとした純愛のお話でした。
 とはいえ、登場人物はみんな個性的。
手の元の持ち主の妻であるドリスは、夫との子供が欲しくて、不妊治療を行なっていた。夫亡き今、唯一のつながりである手の移植先であるパトリックと、病室でことに及び、子供をもうけます。手の移植を担当する医師は、子供と共に犬の糞をボールとした「犬うんちラクロス」に興じ、パトリックの同僚のメアリは、パトリックは要らないけれど、パトリックとの子供は欲しいと、秋波を送り続けます。
 ドリスを愛しながらも、パトリックは女性の誘いを断れず、ときには自分から仕掛けて関係を持ち続けています。それでも、常にドリスのことを思っているパトリック。
 おそらくは、プレイボーイゆえに、女性に一途に愛を捧げる方法が分からないのでしょう。
 どうすればいいのか分からず、悩めるパトリックがだんだん可愛らしく思えてきます。
 他人の不幸によってたかり、視聴率を稼ぐテレビの仕事にだんだんと嫌気がさしてくるパトリックですが、その思惑とは裏腹に、パトリックの需要は高まっていきます。
 ドリスとの貴重な約束の日を前にして、大きな事件が起こり、パトリックにも取材命令が下ります。
 そこでパトリックが決心したことは――
 上下巻に及ぶ作品ですので、当然、たくさんの登場人物が出てきます。その一人ひとりがなんともユーモラスで、脇役についてのエピソードもなかなか楽しいのです。
 馬鹿馬鹿しいのに、なんとも心温まる、不思議な読み心地のお話でした。


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