家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

作者は変態だ、と断言できます。でも、天才でもあるのです。
 全五巻で販売されていましたが、一気読みしました。どこからこの発想が出てくるのやら、という感じです。

 一九六×年、日本人の麟一郎と恋人であるドイツ人のクララは、UFOの墜落現場に居合わせます。その中にいたのは、二千年後の未来に住む、美女ポーリーン。彼女の住むイースという世界では、白人(特に女性)が支配者層として君臨し、日本人は「ヤプー」と呼ばれ、家畜として道具として使役されているのでした。
 誤解がもとで、二千年後の世界へと連れて行かれる二人。
 麟一郎とクララはそこで、ヤプーの生活を眼前にするのです。ヤプーとして扱われる麟一郎と、イース人の中に入っていくクララ。明暗の分かれた二人の運命はいかに――
 ストーリーとしては、以上のごとくですが、そんなものは添え物にすぎません。
 怒涛のように書きつづられる、ヤプーの生態、生活。
 執拗に挿入される、百科事典(架空)、イース史(架空)、論文(架空)による解説。
 極め付けには、日本神話まで盛り込んで、天照大神が実はイース人だったとまで。
 ヤプーでできたスケート=プケート、ヤプーでできたスクーター=プクーターと、ダジャレのような言葉遊びが溢れており、はじめのうちは違和感を覚えるかもしれませんが、次第にそれがたまらなくなってきます。
 変態味に満ち満ちた風呂敷を広げ、馬鹿馬鹿しくも壮大な世界観を作り上げているのです。
 文学的な意味は私には分かりません。
 ですが、至高のエンターテイメントとして楽しめばよいと、そう思います。