鴨川ホルモー (角川文庫)

 鹿男に引き続きの、万城目作品です。
 鹿男も面白かったのですが、私はこっちのほうが好きです。馬鹿馬鹿しさもここまでくれば、大したものです。

 タイトルにある「ホルモー」とは何か。
 それは競技の名前なのです。10対10で行なう非常に奇妙な競技です。ホルモーを行うサークルである京大青竜会に、「俺」は入会します。理由は、新入生である早良さんの美しい鼻。「俺」は早良さんの鼻に一目ぼれしてしまうのです。
 京大青竜会に入った新入生は合計10人。ですが、多感な時期の男女10人、円満にことが運ぶはずもなく、青竜会に訪れる、内部分裂の危機――

 さて、この小説の白眉はやはり、高村という人物でしょう。
 彼は、「俺」と同じく青竜会の新入生です。帰国子女なのにおしゃれとは縁遠く、上着は常にパンツインの高村は、自身の日本人としてのアイデンティティを模索している最中です。総髪にしていた頭が、不本意にもチョンマゲになってしまっても、自分のルーツを見つけたと、案外に上機嫌になる始末。あくまでも常識的な「俺」との会話は、読んでいて笑いがこみあげてきます。
 若干無理のあるストーリー展開も、いたるところにちりばめられた笑いでチャラ以上です。いえいえ、もっと言うならば、まったくしょうもないことを軽妙な文体で書きつづった、代替わりの儀式のシーンだけでも十分かと(シーン的には、小学生男子大喜びレベルなのですが、描写のうまさがたまらないのです)。

 流行るものには理由がある。まったくそのとおりです。
 愉快で馬鹿馬鹿しい青春小説、万城目学作品はまだまだ読まねばなりません。