インシテミル|米澤穂信


インシテミル (文春文庫)

 私事ですが、この小説、記念すべきものなのです。
 ずっと、電子書籍に否定的だったのですが、はじめて、iphoneアプリで一冊丸々読んでみました。悪くないです。ページの切り替えもストレスは感じませんし、いつでもどこでもすぐに読める。便利です。
 難を言うならば、本作は推理小説チックでしたので、建物見取り図と登場人物一覧を、簡単操作で見返せるようにしてもらいたい、ということでしょうか。

 では本題。
 主人公、結城理久彦は「モニター募集」のアルバイトに応募します。偶然見つけたそのアルバイトは、時給十一万二千円と超高額。ダメ元のつもりが、意外にも採用の返事をもらった結城が案内されたのは、「暗鬼館」と呼ばれる地下の屋敷。結城を含めたアルバイト十二人は、そこで七日間を過ごすことになるのですが――
 屋敷に存在する奇妙な仕掛け。連鎖する殺人事件。犯人は誰か? アルバイト募集の目的はいったい何なのか?

 一見すると推理物ですが、まったく違います。じゃあ何か、といわれると、私としても首をひねるしかないのですが……
 アルバイトの募集元、つまり主催者は舞台設定を整えて、実物大・リアルタイムの推理小説を見物しようという目的を持っているようです。ただし、主催者の知識や実力が不足しているため、そこで起きる事件は推理小説としては成り立っていない、ということらしいですが。
 確かに、共犯でもなく犯人が三人もいたら、推理小説としては失格ですからね。
 その他、見取り図を出しておきながら、犯行時・解決時の需要のなさ。あるいは、主要人物の背景の貧弱さ。
 それもこれも、アルバイト募集の主催者の稚拙さゆえ?

 単純にミステリーあるいはホラーとして読ませるのなら、まあある程度は目をつぶりましょう。ですが、初めの方であれほど推理小説要素のおぜん立てをされてしまっては、読む側としても、推理の心持で読むというのを考慮していただきたいと思います。
 
 小道具は考えているな、ということは認めるものの、どうしても肩すかし感が残る作品でした。


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