先日読んだ、岡本綺堂の語り口にひかれ、次いで、「怪談コレクション」なる副題のついた本を購入しました。
うん、やはり岡本綺堂の怪談は面白い。私好みです。
十三篇からなる短編集です。淡々とした語り口調で、特段、恐怖心をあおりたてる書き方はしていないのですが、それがかえって不気味で、うすら寒い雰囲気を作り出しているのです。
たとえば……
混雑した駅の改札口で、知人の死を告げる、見慣れぬ少女。
弁護士試験の時に、必ず姿を見せる白い髪の若い女性。
盂蘭盆の夜、禁を破って海へ漕ぎだすと、静かに舟に這いこんで来る、たくさんの海亀。
などなど。
スプラッターですとか、「わー」とか、「ぎゃー」とかそう言ったホラー小説が好きな人には物足りないかもしれませんが、私はそういうあからさまな怖さよりも、こっちのほうが好きなのです。書きようによっては、全然怖くなくもできるんだろうな、と思いながら、夏の暑さを和らげていただきました。