《新装版》夢幻外伝I (ソノラマコミック文庫)

 漫画について書くのは初めてです。
 分類するなら、ホラー漫画でしょうか。
 黒衣の男、夢幻魔実也が怪奇事件を解決していく、というシリーズものです。これがまた、奇妙な世界観を作り出していて、はまります。
 そもそも主人公の夢幻からして、奇妙なのです。
 強力な力を持ち、神出鬼没。黒ずくめの服装も相まって、闇から現れ、闇へと消えていくような男です。その性質は、無気力で冷笑的。女性から「あなたは天使? 悪魔?」と尋ねられて、「どっちに見える?」と笑みを浮かべたりもしています。
 彼は強力な力をもっているため、取り乱すことはほとんどありません。恐ろしいことでも、淡々と静かに話は進んでいくのです。
 
 これは私個人の趣味の話になるかもしれませんが、ホラー小説なり、漫画なり、映画なりで、悲鳴を上げさせたり、おどろおどろしい化け物を登場させてはいけないのです。どうにも安直な気がしてならないのです。泣きどころならぬ怖がりどころを教えている気がして……
 なので、どちらかというと、私のホラーに対する好みに共鳴してくれる方にお勧めです。妖しい雰囲気は中毒性があるので、ご注意を。
 
 さて、なぜこのタイミングで漫画なのかといいますと、先の岡本綺堂の小説に関係しているからです。本のタイトルでもある「白髪鬼」。これを原作とした漫画作品「白髪の女」が収録されています。
 ほぼ原作どおりで、高橋葉介お得意の色気の漂う絵柄で飾り立てられています。
 筆で書かれたエロティックな絵柄が魅力の作者なので、乱歩の小説も意外にはまるのでは、と私はひそかに期待しています。