ちーちゃんは悠久の向こう (角川文庫)

 こういうお話だったんですね。かなり昔にタイトルだけは耳にしたことがあるのですが、私の好みに合わなそうと思って、ずっと放置していました。

 主人公、久野悠斗には、ちーちゃんなる幼馴染がいます。彼女は幼い時、主人公を押し入れの中に引っ張り込んで、怪談を披露していたほどのオカルト好き。高校に入学すると、ちーちゃんはオカルト部に入部し、高校に伝わる七不思議の調査に主人公をかりだします。そこで起った怪異により、幽霊を見ることができるようになったちーちゃん。それ以来、二人の日常には少しずつひびが入っていきます。そしてある日、決定的な出来事が――

 青くさっ、というのが第一印象です。まあ、著者は当時高校生だったということですので、ある程度、いたしかたない部分があるのかもしれませんが、それにしても……まず、登場人物がステレオタイプすぎます。

 さらに、驚いたのはこの表現
〈冷酷な冬の女神が柔和な春の女神にバトンタッチするそんな初春の朝(P8)〉
〈活力に満ちた夏の女神が友愛に満ちた秋の女神にバトンタッチする初秋の学校(P119)〉
 うん、この表現が気に入ったの? と腰をかがめて優しく尋ねてみたくなります。

 とはいえ、これだけの欠点がある中でも、するすると読めましたので、文章自体は下手ではないのでしょう。
 全体としてのトーンが青春小説だったので、怪異が起こる場面が浮いてしまうという結果になってしまいましたが、意外に正統派青春小説ならばはまるのかもしれません。プロとして長続きしているようですので、欠点が改善されていることを期待して、最新作をもう一つくらい読んでみてもいいかなあ、というのが全体としての感想です。