天使と悪魔 (上) (角川文庫)

 あれ? という感じです。悪い意味での予想外。「ダ・ヴィンチ・コード」は面白かったと記憶していたので、こちらもかなり期待を込めて読みはじめました。

 主人公は、ハーヴァード大の宗教象徴学の教授であるラングトン。ある朝、彼のもとに一本の電話が入ります。電話の相手は、スイスにある物理学研究所の所長。所内で一人の科学者が、焼印を押された死体として発見され、その焼印は、今は消え失せた科学組織「イルミナティ」の紋章を描いたものだというのです。
 殺された科学者は、非常な威力を持つ反物質の大量生産に成功していたといい、反物質は彼の研究室から持ち去られていました。持ち込まれた先は、ヴァチカン。今まさに、新しい教皇を決めるためのコンクラーベが開かれている、その場所でした。長年対立し続けていた、キリスト教を破滅に追いやるべく、動くイルミナティ。時限装置付きの反物質の保存期間は、その日の夜零時。ラングトンは、殺された科学者の娘であり、反物質の生産に関わっていたヴィットリアとともに、ヴァチカンに乗りこむのです。
 果たして、イルミナティの正体とは? 時間内に、反物質の回収はできるのか?

 といったところが大筋でしょうか。実際には、一時間ごとに教皇の候補である枢機卿が殺されてしまうという、二重の時間制限があるのです。
 ラングトンの推理により枢機卿の殺害現場を突き止めるという筋書きなのですが、このラングトン、彼に任せてしまって大丈夫? と情けない気分になってしまうのです。推理の間違い、あるいは一足遅れなど、ミス続きでどうにもお間抜けな人物に見えてしまいます。危機一髪の場面も、知恵を絞るのではなく、偶然命拾い。正直あまり格好良くありません。そのくせ、一丁前に色目は使う。
 ストーリー展開にしても、狙っているのが見え見えで、鼻白んでしまいました。
 キモは蘊蓄、といってしまえばそれまでなのですが、蘊蓄もそれほど興味を持てなかった私にしてみれば、次回作に期待、というところでしょうか。