ザ・万歩計 (文春文庫)

 今をときめくエンターテインメント作家、万城目学の初エッセイ。
 実のところ、作家の名前だけでレジに運んでしまったので、それがエッセイだということは、家に帰ってから気がついたのですが。

 さて、私は普段、エッセイというのはあまり読まないのですが、これは面白いです。
 言葉の使い方が上手なんですね。
 著者はなかなかフットワークが軽いらしく、ヨーロッパ、タイ、カンボジア、トルコ、モンゴルと様々な国に行っていますが、正直なところ、それについての紀行文よりも、普段のどうってことのない生活を面白おかしく書いた内容のほうが私は好きです。

 中学時代の農作業の思い出。御器齧りとの戦い。
 テーマがしょうもなければしょうもないほど、文章が際立つという、不思議な魅力にあふれています。あえて仰々しい言葉を使ってみる。あえて大袈裟な言い回しをしてみる。
 考え抜かれた文章でありながら、嫌味を感じさせません。

 著者お得意の、くだらなさとスピード感はエッセイになっても健在です。
 エッセイは苦手だからと敬遠しないでください。次回作にも期待です。