気になりつつも、なかなか手を伸ばせなかった本作です。
タイトルと、表紙のイメージから、グロテスクなストーリーを勝手に想像して、敬遠していました。ようやくアマゾンで注文して読んでみたのですが、いや、勘違いしていました。
グロテスクな要素は全くと言っていいほどない、ダークな童話といった趣もある作品でした。
喫茶店で、彼女は「わたし」に、奇妙な話を物語ります。それは、彼女の幼いころにいたという、「玩具修理者」についてのことです。名前も年齢も性別すら分からない、玩具修理者は、その名の通り、壊れたおもちゃを何でも直してくれるのです。単純なものから複雑なものまで何でも。そしてときには、死んだ猫まで。
弟を誤って死なせてしまい、「玩具修理者」のもとへ運んでいったときのことを、彼女は語ります――
怖いのは彼女の思い出話に登場する「玩具修理者」の存在ではありません。
彼女の話が本当か否か、いうなれば、彼女の妄想にすぎないのか否か、それがはっきりしないのが恐いのです。面と向かって聞いている「わたし」の心中はいかほどのものか。
そして、怖さ倍増のオチ。
短編らしい展開の話で、だいぶ満喫させていただきました。
設定に凝り過ぎた感は否めませんが、もう一つの収録作品、「酔歩する男」もなかなかの良作です。