絵画の切り取った一場面をもとに、その時代背景あるいは画家の心境などを展開していく、という本です。
単行本でも「怖い絵」シリーズが刊行されており、ちょっと気になっていたところでしたので、新書で似たような主旨の本が出ているのを見つけて、購入しました。
「怖い絵」とはいっても、その絵自体が怖いわけではありません。結局のところ、完全に客観的な絵画というのは存在せず、どんなに写実的な作品でもどこかに画家の主観が入ってしまうのです。それが先に述べたように、時代的背景によるものであったり、画家個人の心情であったりは様々ですが。
たとえば……
首筋の皺で老いを強調した悪意ある肖像(ジャック=ルイ・ダヴィッド『マリー・アントワネット最後の肖像』)
家畜のように舟を引かされる血色が悪く、目もうつろな労働者(イリヤ・レーピン『ヴォルガの舟曳き』)
周囲の情況を鑑みて初めて理解できる絵というのが多々、というよりも大多数だというのを実感させられました。
本作を読んで、絵画に興味を持つというルートも無きにしも非ずですが、どちらかというと、ビジュアルから歴史に興味を持つコースの方が可能性がありそうです。画家にとっても、どうせ描くならありふれた日常ではなく、ショッキングな出来事の方が面白そうですからね。もちろん、私個人の考えですが。
私の学生時代は世界史お手上げ状態でしたので、この本を読んで、少しずつ興味の範囲を広げていこうかな、と思いました。
絵自体は怖くないとはいえ、おどろおどろしい雰囲気の絵も多々ありますので、通勤・通学電車で読むのは少々勇気がいるかもしれません。