赤朽葉家の伝説|桜庭一樹


赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

 中国地方の旧家、赤朽葉家の三代の女とその一族を描いた、長編物語です。
 
 物語はそれぞれの代で、一部ずつ割り当てられています。
 第一部は、語り手である「わたし」の祖母にあたる万葉。
 第二部は「わたし」の母親である毛毬
 そして、第三部は「わたし」。

 定住することのない“辺境の人”に置き去りにされ、村の夫婦に引き取られた万葉には、未来を見ることができるという不思議な力があった。ある日、万葉の見た、片目の空飛ぶ男。その正体を知らないまま、万葉は恋心を抱くのです。
 その男の正体はすぐに明かされますが、男がなぜ空を飛んだのか、これは「わたし」の代まで解けることのない謎なのです。
 成長し、赤朽葉家に輿入れすることになった万葉。彼女はそこで、「千里眼奥様」と呼ばれながら、四人の子をもうけます。その中の、二番目の子供、毛毬が次の主人公となります。
 大柄で人目を引く美貌をもつ毛毬は、中国地方一帯にその名をとどろかせる、伝説のレディース。しかし、とあることがきっかけで、少女漫画家としての才能を開花させ、漫画に生涯をささげることになるのです。
 そして、その娘の「わたし」は、祖母や母のような才能はなく、ごくごく平凡な女性です。

 三代の女性が時代の波にもまれながら、生き抜いていく様を描いた物語なのでしょう。

 中学生のお小遣いで買える、レプリカのバトルアックスで人殺し、という失笑ものの「少女には向かない職業」でだいぶうんざりしていたのですが、いや、わりと良いのではないでしょうか。三代にわたる年代記ということで、だいぶページ数はかさんでいますが、すらすらと読めます。狭い村の中での話ですので、最後の「わたし」の時代になると、過去のつながりが出てくるので、この村にも愛着が出てくるのが不思議なのです。
 空飛ぶ男の謎ときにつながる伏線はよくできていると思います。

 とはいえ、時代描写に薄っぺらさを感じてしまいます。
 近代の歴史の類の本に「○○が流行った」と書いてあったのを、そのまま写してしまった感がぬぐえません。時代との関わりをもっと濃厚に書けばもっと現実味が出てくるのではないかと。

 いや、でもこれからも新刊が出たら買ってみようかなとは思いました。


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