黒い季節|冲方丁


黒い季節 (角川文庫)

 待ってました、という感じです。本屋大賞を受賞し、何かと話題の冲方丁のデビュー作です。アマゾンでも入手困難で、角川文庫の新刊に並んでいたのを見て、喜び勇んで購入した次第です。

 様々な人たちの思惑入り乱れ、という構成なので、一概には言えませんが、あえて主人公を決めるなら、藤堂という男でしょう。彼は、黒羽組というヤクザのトップで、心に深い闇を抱えています。物語は、彼が記憶喪失になった少年「穂(すい)」を拾うことから動き出します。ヤクザという裏の世界の争いに、さらに裏の世界に生きる、不可思議な力を持つ人間たちの争いが絡み、さらには、黒羽組の所属するヤクザのグループ「申楽」の過去も絡み、全ての決着をつけるための、最終決戦へともつれこんでいくのです。

 スニーカー文庫大賞という、ライトノベルのレーベルの新人賞を受賞した作品にもかかわらず、何と舞台はヤクザの世界です。主役級の藤堂という男も、私の印象からすると、苦み走った中年男。ライトノベルという響きにふさわしくない、重量級の内容となっています。
 しかし、冲方はすごいですね。見せ方がうまい。
 もちろん、デビュー作ということですので、展開に無理のある所もありますし、ありがちな言い方をするならば、荒削りな部分も散見されますが、それを差し引いても、十分に楽しめる内容になっています。
「新人賞に求められるもの=才能・勢い」という図式を最近実感するようになりましたが、これこそまさにその典型という感じです。角川の社員はこの作品を見て、狂喜したに違いありません。

 内容、骨太。文章、重厚。ですが、設定および展開はライトノベルチックですので、読みつけていな人には入りにくいところがあるかもしれません。はじめての人は、もう少しメジャーな作品「マルドゥック~」などを読んで、冲方の世界に少しふれてからのほうが楽しめるかと思います。


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